ビフォーアフターを載せる前に、何を確かめるのか
ビフォーアフターは、体の変化が一目で伝わる表現です。その分、確かめることがいくつかあります。
この記事は、公式の説明が出ている 4 つに絞ります。
- 「個人の感想です」などの打消し表示で、誤認は解けるのか
- 体験談は、見る人にどう受け止められると説明されているか
- 会員に頼んだ感想を載せるときの、ステルスマーケティング(ステマ)の規制
- 写真の本人の同意と、一緒に書く条件
効果を示す表示に根拠の資料が求められうる点は、体験の前に利用者が気にすることの記事で書きました。ここでは重ねません。
この記事は法律の助言ではありません。消費者庁などの説明を引いたもので、個別の表示が問題になるかの判断はしません。迷う表示は、消費生活センターや専門家に確かめてください。
「個人の感想です」と添えれば、誤認は解けるのか
消費者庁は、打消し表示についての調査を 2017 年から 2018 年にかけて公表しました。その考え方を 1 つにまとめた資料が、2018 年 6 月 7 日に出ています。打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点です。
この資料は、まず言葉を整理しています。強調表示は、断定的な表現や目立つ表現で、品質や取引条件を強調した表示です。打消し表示は、強調表示だけでは分からない例外や制約を伝える表示です。
資料は、強調表示が「無条件、無制約に当てはまるものと一般消費者に受け止められる」ため、例外があるなら打消し表示を分かりやすく適切に行わないと、不当表示として問題となるおそれがある、と説明しています。
打消し表示は、例外的に使うものだとも書かれています。強調表示の内容が、商品・サービスの実際を反映していることが原則です。強調表示と打消し表示が矛盾する場合も、問題となるおそれがあるとされています。
打消し表示そのものの見せ方にも、判断の要素があります。文字の大きさ、強調表示とのバランス、配置の場所、背景との区別などです。小さい文字や、強調表示から離れた位置では、気付けない、読み終えられない、と資料は説明しています。
資料は、2017 年の「打消し表示に関する実態調査報告書」などをもとにしたまとめです。調査の対象は商品・サービスの表示全般で、例にはパーソナルジムは出てきません。
体験談は、どう受け止められると説明されているか
同じ資料の第 4 に、体験談の節があります。要点を、資料の言葉に近い形で並べます。
- 体験談をねつ造する場合や、一部の都合の良い体験談だけを引用する場合は、不当表示に当たるおそれがある
- 体験談を見た消費者は「『大体の人』が効果、性能を得られる」という認識を抱く
- 「個人の感想です。効果には個人差があります」といった打消し表示に気付いても、その認識が変わることはほとんどないと考えられる
- 効果を全く得られない人が相当数いるのに、効果があった体験談を載せると、打消し表示が明瞭でも、問題となるおそれがある
つまり、公式の説明では、「個人の感想です」の一文に気付いても、体験談の受け止めが変わることはほとんどないと考えられる、とされています。書くかどうかより前に、どの体験談を載せるかが問われます。
資料はさらに、体験談を使うときの留意点を挙げています。
- 併用が必要な事項(例として食事療法、運動療法)や、特定の条件(例として BMI の数値が 25 以上)の人しか効果が得られない場合は、その旨を明瞭に表示する
- 商品の効果について事業者が行った調査があるなら、被験者の数と属性、体験談と同じような効果を得た人の割合、得られなかった人の割合などを、明瞭に表示すべき
2 つ目は、効果の調査を前提にした記述です。小さなジムで、同じ条件の会員のうち何人が同じ変化だったかを数えていない場合、載せる側がこの割合を出せません。その場合は、その体験談を載せない、という選び方もあります。これはこの記事の提案です。
なお、資料の例は主に商品です。サービスにも同じ考え方が当てはまるかは、個別の表示ごとに専門家に確かめてください。
会員に頼んだ感想は、店の表示だと分かるようにする
ステルスマーケティングは、広告なのに広告だと分からない表示です。2023 年 10 月 1 日から、景品表示法の規制の対象になりました。消費者庁の解説ページによると、規制を受けるのは、商品・サービスを供給する事業者(広告主)です。
消費者庁の運用基準は、自社のウェブサイトの表示は、事業者の表示であることが明らかなので、原則として対象にならない、としています。ただし例外があります。
運用基準の言葉では、専門家や一般消費者などの第三者の客観的な意見として表示しているように見えるのに、実際は事業者が第三者に依頼・指示して書かせた場合です。そのときは、第三者の表示が事業者の表示であることを、明瞭に表示しなければなりません。
運用基準は、その表示の例を挙げています。
「弊社から○○先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。」
ジムの場合は、次のように読み替えられます。ここは運用基準の例を、この記事が当てはめたものです。
- 店が会員に感想を書いてほしいと頼み、その文を載せるなら、「当店から依頼して書いていただいた感想です」と分かる位置に書く
- 会員が自分の意思で書いた感想を、手を加えずに載せるなら、事業者の表示に当たらない場合がある(下の Q&A 参照)
消費者庁のQ&Aの Q10 は、アンケートの回答から「顧客の声」を載せる場合を扱っています。回答の中から無作為に選んで引用するなら、事業者の表示に当たらないと考えられる。好意的な評価だけを選んだり、「良い点」と「悪い点」のうち良い点だけを引用したりすれば、事業者の表示に当たると考えられる。そのときは、事業者の表示であることを明瞭にしないと、告示に違反する、と書かれています。
これは前の節の「一部の都合の良い体験談だけを引用する場合」とつながります。載せる感想の選び方が、2 つの規制の両方に関わります。
表示の方法にも注意があります。運用基準は、事業者の表示であることを文末に置く、周囲より小さい文字にする、薄い色にする、といった書き方を、明瞭でない例に挙げています。
Q&A の Q2 によると、告示に違反する行為が認められた場合、消費者庁は措置命令を行います。
写真を載せるとき、本人の同意はどこまで要るか
個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、個人情報を、生存する個人に関する情報で、特定の個人を識別できるものと説明しています。「個人に関する情報」には、顔画像などが含まれ、映像による情報も含まれます。事例には「本人が判別できる映像情報」があります。
顔が写る写真は、個人情報に当たる、と読めます。顔が写らない写真でも、名前などの他の情報と合わせて本人と分かるなら、定義の「他の情報と容易に照合できる」に当たりうると読めます。この読み方は、この記事のものです。
個人情報を取得したときの決まりは、次のとおりです(ガイドラインの「利用目的の通知又は公表」「直接書面等による取得」の項)。
- あらかじめ利用目的を公表していないなら、取得後、速やかに、利用目的を本人に通知するか公表する
- 契約書や申込書などの書面で、本人から直接取得するときは、あらかじめ利用目的を本人に明示する
個人情報保護委員会の Q&A(Q7-11)には、写真の展示を扱ったものがあります。会社の行事で撮った写真を社内で展示するとき、本人の同意が要るか、という質問です。
回答の要点は、次のとおりです。
- 本人を判別できる写真は、個人情報に当たる
- 本人の同意なしに展示しても、第三者提供の制限(法第 27 条第 1 項)に違反するおそれはないと解される
- ただし、利用目的を通知か公表することは必要
- プライバシーや肖像権の侵害になる場合もある。展示期間を限定する、不特定多数への提供では自主的に本人の同意を得る、といった取組が望ましい
この Q&A は社内の展示の質問です。公開のページに載せる場合の答えではありません。ただ、不特定多数に見せるときは同意を得る取組が望ましい、という方向は読み取れます。
これを店の運用に落とすと、会員に同意書を書いてもらう形が考えられます。同意書に、写真を使う場所(自店のページ、Instagram など)と目的を書けば、利用目的の明示と同意を一度に済ませられます。これは提案で、法的に十分かの確認ではありません。
読んだガイドラインは、令和 6 年 12 月に一部改正された版です。個人情報保護委員会のサイトには、令和 8 年の法改正の特集ページもあります。載せる前に、最新の版を見てください。
写真には、期間・食事・回数の条件を一緒に書く
前の節の消費者庁の資料は、併用が必要な事項や、特定の条件の人しか効果が得られない場合は、その旨を明瞭に表示するよう求めています。ジムの写真に当てはめると、次のような条件です。
| 書く条件 | 書き方の例 | 根拠 |
|---|---|---|
| 期間 | 撮影の間隔(何か月か) | この記事の提案 |
| 通った回数 | 期間中のセッションの回数 | この記事の提案 |
| 食事 | 食事の指導をしたか。会員自身が変えた内容 | 併用が必要な事項の例に、食事療法が挙がる |
| 運動 | セッション以外の運動の有無 | 併用が必要な事項の例に、運動療法が挙がる |
| この人の条件 | 元の体型など、結果に関わった条件 | 特定の条件の例に、BMI の数値が挙がる |
| 全員ではないこと | 同じ期間通った会員のうち、この変化の人の数 | 調査があるなら割合を明瞭に表示すべき、という説明 |
「個人の感想です」の代わりに、これらの事実を書く、と考えます。事実で書けない部分は、載せない部分です。
撮影の条件(同じ姿勢、同じ照明、同じ時間帯)をそろえて、そのことも書く、という方法もあります。見た目の差を大きく見せていない、と示せるためです。これは消費者庁の説明ではなく、この記事の提案です。
載せる前のチェックリスト
ここまでを、載せる前の 5 項目にまとめます。
- 写真の本人の同意を得て、写真の使い道(自店のページなど)を伝えた
- 期間、食事、通った回数などの条件を、写真と一緒に書いた
- ページ全体を読んで、誰でも同じ変化が起きる、と受け取れる書き方になっていない
- 店が依頼して書いてもらった感想には、店から依頼した、と分かる一文がある
- 感想や写真を、好意的なものだけに絞って選んでいない
3 番目の確認は、ページ全体で行います。消費者庁の資料は、受け止めは表示全体で判断される、と説明しています。体験談の隣に、「誰でも」「短期間で」のような言葉があれば、その言葉も見られます。
この確認は、法律の判断ではありません。「この書き方で大丈夫か」が気になるときは、お住まいの地域の消費生活センターや、弁護士などの専門家に、実際の文面を見せて確かめてください。
体験談や写真をどの順に置くかなど、ページの作りは、パーソナルジム向けのページで説明しています。相談はお問い合わせからどうぞ。新しいサイトの制作はモニター 5万円、月額なしです(ドメイン代は別)。