国民生活センターの相談には、規約に関わる何が載っているか

国民生活センターは 2026 年 10 月 7 日に、パーソナルトレーニングの契約トラブルを公表しました。報道発表資料(PDF)に、規約の書き方に関わる事例が 3 つあります。

  • 事例 1:体験のあとに契約し、翌日に解約を申し出たところ、解約には応じたが、入会手数料と月会費の支払いを求められた
  • 事例 4:1 年のコースを途中で解約したいと伝えると、割引の適用がなくなると言われた。請求書には入会金も含まれ、契約書面に入会金の記載は見当たらなかった
  • 事例 5:解約の方法を問い合わせても「契約書と利用規約を確認するように」との返信だけで、解約申請書がなかなか渡されなかった

事例 6 は、10 回のコースを一括で払い、予約が取れなくなって解約を申し出たところ、未利用分の返金を約束されたが、返金されていない、という内容です。

資料は、問題点の 1 つとして「中途解約時の手続や精算が複雑になりやすい」を挙げています。入会金、月会費、未利用分の料金、キャンペーンによる割引、解約料などが関わるため、「どのような計算で請求額が算出されたのか、消費者が理解できない」事例もある、という説明です。

消費者へのアドバイスには、契約前に確認する点が並びます。契約総額、契約期間・回数、自動更新の有無、中途解約の可否や精算方法、解約料や違約金の有無、解約手続の方法、未利用分の返金、割引の解約時の扱いです。「途中でやめたらいくら返金されるのか」「いつまでに申し出ればよいか」を具体的に確認するよう、書かれています。予約の変更・キャンセルの条件や利用期限も、確認する点に入っています。

資料の事例は、消費生活センターに寄せられた相談の要旨です。どの店の話かは分からず、店側の言い分は載っていません。この記事は、相談で問題になった点を、規約に先に書いておく項目として読み替えたものです。

規約で先に決める 7 項目は、何か

上の事例と助言から、決めておく項目を 7 つに整理しました。項目の選び方はこの記事の整理で、公的な基準ではありません。

規約で先に決める 7 項目のチェックリスト。入会金、有効期限、休会、解約の申し出の方法と期限、返金の計算、割引の扱い、体調不良や転居のとき
規約で先に決める 7 項目。決めてから文にします。
項目決めること背景になる出典の言葉
1 入会金あるか。いつ払うか。解約のとき返すか、請求するか事例 1・4 に、解約後の入会金・入会手数料の請求がある
2 回数券・コースの有効期限回数を使える期限。期限が過ぎた回数の扱い。延長の条件助言に「利用期限」の確認がある
3 休会休会できるか。できる場合の期間と手続。休会中の支払いこの項目を直接扱った記述は、資料に無い(店で決める)
4 途中解約の申し出の方法連絡の手段(メッセージ、書面、来店のどれか)。いつまでに申し出るか。受け付けた旨をいつ返すか事例 5。助言に「いつまでに申し出ればよいか」
5 返金の計算返すのか、返さないのか。返すなら、式と、いつ払うか助言に「途中でやめたらいくら返金されるのか」
6 割引の扱いまとめ払いなどの割引が、途中解約でどうなるか。計算に使う単価事例 4。問題点に「キャンペーンによる割引」
7 体調不良・転居のとき通えなくなる事情があるとき、休会、回数の譲渡、解約のどれを選べるか。証明の要否事例 4 は仕事で通えなくなった例、事例 6 は予約が取れなくなった例

7 は、事情ごとに扱いを変えるかどうかも決めます。変えるなら、事情の例と、扱いを分ける理由を規約に書きます。変えないなら、「事情を問わず、4〜6 の決まりによる」と書く方法があります。

料金の表の並べ方と、特定継続的役務提供の範囲は、体験の前に利用者は何を気にするかに書きました。ここでは重ねません。

途中解約の返金は、どう式にするか

資料は、精算が複雑になりやすく、計算が分からない事例もあると書いています。店が先にできるのは、計算の流れを式で規約に書き、利用者が自分で当てはめられるようにすることです。

途中解約の返金の計算の流れ。支払った総額から、使った分と規約で定めた差し引く額を引いて、返金額を出す
返金の計算の流れ。数字は契約ごとに入れます。

式の例です。

返金額 = 支払った総額 − 使った分 − 差し引く額

使った分 = 使った回数 × 1 回あたりの単価

この式を規約に使うなら、次の点を先に決めます。

  • 支払った総額に、入会金を含めるか。含めるなら、入会金は返金の対象か
  • 1 回あたりの単価は、割引の前の料金か、割引のあとの料金か(事例 4 が、割引の取り消しの説明が食い違った例です)
  • 使った回数に、無断で来なかった予約や、期限が切れた回数を入れるか
  • 差し引く額があるなら、何のための額か。どう決めたか
  • 返金の方法と、申し出から何日以内に払うか

月額の契約でも、式の形は同じにできます。支払った月数と、使った月数を使い、解約を申し出た日で区切る日を決めます。区切る日は、事例 5 のように申し出の日と受理の日が食い違わないよう、申し出が届いた日を基準にするかどうかも書いておきます。

この記事では、金額の例は載せません。式に入れる数字は、実際の契約と同じものにしてください。

消費者契約法は、規約の何に関わるか

消費者庁のページは、消費者契約法を、消費者と事業者の間に情報の質・量や交渉力の格差があることから、消費者の利益を守るために設けられた法律だと説明しています。不当な勧誘による契約の取消しと、不当な契約条項の無効等を定めています。

規約の解約や返金の条項に関わる条文は、主に 2 つです。以下は、条文と消費者庁の逐条解説の言葉に沿った整理です。

条文条文の言葉逐条解説の説明
第 9 条
損害賠償の額を予定する条項等
解除に伴う損害賠償の額の予定と違約金を合わせた額が、同種の消費者契約の解除に伴い事業者に生ずべき「平均的な損害の額」を超えるときは、その超える部分が無効になる。支払いが遅れたときの損害賠償・違約金にも上限がある「平均的な損害の額」は、同じ事業者が結ぶ多数の同種の契約を類型的に見て、解除の事由・時期などの区分ごとに出す平均値。業界の水準を指すものではない
第 10 条
消費者の利益を一方的に害する条項
法令の任意規定による場合に比べて消費者の権利を制限し、または義務を加重する条項で、民法第 1 条第 2 項の基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効になる第 8 条・第 9 条に当たらない条項にも当てはまる、包括的なルール

第 9 条の第 2 項は、解除に伴う違約金などを請求する場合に、消費者から説明を求められたときは、算定の根拠の概要を説明するよう努めなければならない、と定めています。これは努力義務ですが、違約金や差し引く額を置くなら、求められたときに根拠を説明できるよう、決め方を控えておくと安心です(この記事の提案)。

第 9 条の説明は、平均的な損害を「あらかじめ消費者契約において算定することが可能なもの」としています。ただし、自店の規約の金額がこの範囲に収まるか、第 10 条に当たる条項があるかは、この記事では判断できません。条文の読み方は事案ごとに変わりうるためです。

この記事は法律の助言ではありません。ここに書いたのは、消費者庁と e-Gov の公表資料の説明です。自店の規約に当てはめた判断は、弁護士などの専門家に頼んでください。

規約は公式ページのどこに置き、申し込みの前にどう見せるか

相談事例には、契約書面や利用規約を確認しないまま契約した例や、契約書の控えを受け取っていなかった例があります(事例 3、事例 5)。資料の助言は、契約書面や利用規約をよく確認し、納得してから契約することを勧めています。店の側でできるのは、読める場所に置き、読む機会を申し込みの前に作ることです。

規約を見せる場所。Instagram のプロフィール、公式ページの料金表、体験の申し込みフォームの 3 か所が申し込みの前で、体験の当日に紙で渡す
規約を見せる場所。緑の 3 か所は、申し込みの前です。
  • 規約は、画像ではなく文字のページにする。スマホで読め、検索や読み上げにも使える
  • 公式ページの料金表のすぐ隣に、規約へのリンクを置く。解約のときの扱いは、料金と同じ場所で分かるようにする
  • 体験の申し込みフォームに、規約を開けるリンクを置く。同意の欄を置くなら、リンクを読める状態にしてから
  • Instagram のプロフィールのリンクは、料金表のあるページにつなぐ
  • 体験の当日は、規約を紙かデータで渡す。その場で決めなくてよいこと、持ち帰って読めることを書く(体験の流れは、前の記事に書きました)
  • 入会するときは、契約の控えを渡す。渡した日を記録しておく
  • 規約を変えたら、日付を書く。以前に入会した人の契約にどう適用するかも決める

規約の置き場所は、この記事の提案です。公的な基準ではありません。

法的な確認は、誰に頼むか

この記事で整理できるのは、決める項目と、書き方の骨組みまでです。次の点は、専門家に確かめてください。

  • 違約金や差し引く額が、第 9 条の平均的な損害の範囲に収まるか
  • 入会金の扱いや、返金なしの条項が、第 10 条に当たらないか
  • エステや痩身の施術など、関連するサービスを同じ契約で売る場合の扱い(国民生活センターの資料は、特定継続的役務提供に当たる契約ならクーリング・オフを主張できる可能性がある、と説明しています)
  • 電子契約や、申し込みフォームでの同意の取り方

相談先は、弁護士です。国民生活センターの資料は、消費者に向けて、最寄りの消費生活センター等への相談を案内しています(消費者ホットライン「188」)。消費生活センター等の一覧が公開されています。事業者向けの相談窓口があるかは、今回の調べでは確かめられませんでした。

私たちが手伝えるのは、決まった内容を、公式ページに読みやすく並べる作業です。法的な確認は含みません。新しいサイトの制作は、モニター 5万円・月額なしで受けています(ドメイン代は別)。パーソナルジム向けのページで説明しています。